2015年12月28日 (高橋厩舎の日常)
2015年もたくさんのご声援、本当にありがとうございました。
数々の応援や温かい激励、全てが厩舎スタッフ一人一人の原動力になったと思います。
今年の成績は271戦 21勝(地方含む)
目標の勝利数には届きませんでしたが、来年は厩舎通算100勝始め、もっともっと勝ち星を伸ばしたいと思います。
開業5年目の今年も本当にいろいろなことがありました。
高橋厩舎を支えてくれた数々の競走馬も引退しました。
開業以来初めて、競馬でのつらい事故もありました。
ここまで頑張ってくれた一頭一頭のサラブレッドに心から「ありがとう」を言いたいと思います。
今年は21勝に終わってしまいましたが、重賞は去年を上回る4つも勝つことが出来ました。
その重賞を勝った1頭に、今月の17日に競走馬登録を抹消したシャトーブランシュがいます。少し時間が経ってしまいましたが、最後に彼女についての思いを綴りたいと思います。
シャトーブランシュが高橋厩舎に来たのは2014年の3月ー
そこから引退するまでに15戦して2勝。 そのうちの一つが今年のGⅢマーメイドステークスでした。
厩舎にとって初めての芝でのタイトル、そして牝馬としても重賞初制覇。
「牝馬を走らせることの難しさ」は常々厩舎として考えてきました。
先生が「これで厩舎としてもう一つ上のレベルに行ける」そうコメントしたように、このシャトーブランシュの勝利にはとても重要な意味があって、この経験が、後のクイーンS制覇(メイショウスザンナ)につながったのは言うまでもありません。
また、このマーメイドステークスの前日には、これまで厩舎を引っ張ってくれた功労馬であるサンレイレーザーが引退していました。本当に大事な時期に、その走りで厩舎全体を元気づけてくれました。
彼女は、競馬ではもちろんの事、普段から本当に魅力的な馬でした。
人懐っこくて甘えん坊で、いつも馬房から顔を寄せてきて、、。僕は毎日のように話しかけに行ったけれど、どんなにじゃれても噛まれたことは一度も無かった。
けれども、ひとたびスイッチが入ると急にワガママになったり、我の強さも見せました。
調教では坂路コースが嫌いで、急に暴れ出したり引っくり返って騎乗者を振り落としたり、、。
タオルが大嫌いで体を拭く時はいつも蹴ってこようとするし、前髪の手入れの際はブラシを嫌がって手で髪をといてあげないとすごく怒ったり。
馬運車では1頭だけで運ぶと寂しがって、ずっと担当者をそばに居させたり、、。
数え上げればキリがないくらい、本当にかわいくて仕方が無かったです。
最後のレースとなったチャレンジカップ。
僕も最後の姿を見届けたくて阪神競馬場へ行きました。
結果は16着ー
引きあげてきた康太ジョッキーは「馬場が悪いのもあるけど、全然ハミを取って進んで行かなかった」と。
前走のエリザベス女王杯の時は本当に悔しかったですが、今回は不思議と「悔しさ」よりも、これで最後という「寂しさ」と「ホッとした気持ち」の方が大きかったです。
「マーメイドSで全部出しきって、もう牧場に帰りたがってるんかな」
「重賞取って帰れるんやから、きっと大事にしてもらえるわ」
そんなことをスタッフと話しながら、無事に帰ってきてくれたことに心から感謝しました。
競走馬には、いわゆる「重賞級のポテンシャル」を持った馬は星の数ほどいます。
そんな馬でさえ未勝利で終わることもあるし、あるいは500万クラスで終わることもあります。
中央競馬には1年間に重賞競走が130以上あり、彼女はその中の一つを勝っただけかもしれません。
けれども、その「重賞1つ」を勝つことの難しさを、競馬界に生きるホースマンは皆理解しています。
高橋厩舎にとっても、応援して下さったファンの方にとっても、そしてシルクレーシングの会員の方にとっても彼女は間違いなく名馬です。
北海道に帰った彼女には、子供を遺すというお母さんとしての大事な仕事が待っています。
日本を席巻するサンデーサイレンスの血が入っていないシャトーブランシュは、牧場に取っても大切な存在に違いありません。
そしてきっと、、たくさんの元気な子どもたちを産んでくれると思います。
どんな子どもが生まれるのか、、。
その日が来ることが、本当に楽しみで仕方ありません。
最後に、、転厩当時まだ重賞を勝ったことのない高橋厩舎に、シャトーブランシュを預けて下さったシルクレーシングとノーザンファームの関係者の皆様に、心より御礼申し上げます。
2016年もオーナー様、牧場関係者様、そして応援して下さる全ての皆様の期待に少しでも応えられるよう、厩舎全体でより一層精進して参ります。
来年も宜しくお願い致します。
武田